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中国は、リトアニアへの不当な圧力を撤回すべきだ。
台湾は昨年11月、リトアニアの同意のもと「台湾」の名前を冠した出先機関「台湾代表処」を設置した。
共産主義国家のソ連に併合され、長く抑圧されたバルト三国のリトアニアは自由と民主主義などの基本的価値を重視し、全体主義による人権弾圧問題に敏感だ。
リトアニア議会は昨年5月、「新疆ウイグル自治区でジェノサイド(民族大量虐殺)がある」とした対中非難決議を行った。リトアニアは同月、中国が中東欧で進める経済協力の枠組み「17+1」から離脱した。さらに、台湾に約25万本の新型コロナウイルスワクチンを提供するなど友好関係を深めている。
中国は「台湾代表処」設置は「一つの中国」の原則に反すると非難した。中国外務省報道官は「リトアニアは歴史のゴミ箱にたたきこまれる」とののしり、中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は社説で「リトアニアのような小国が大国との関係を悪化させる行動をとるのは度し難い」と評した。
度し難いのは、中国政府の歪(ゆが)んだ大国意識のほうである。
駐リトアニア大使は中国へ帰国し、リトアニアにある中国大使館は領事館へ格下げされた。ビザ発給など領事業務を停止した。
外交特権剝奪をちらつかせ、リトアニア外交官を中国から追い出した。外交関係に関するウィーン条約違反である。
リトアニアから中国へ出荷された物品の通関を差し止める報復も行った。さらに、リトアニア製部品を使えば、欧州連合(EU)諸国の企業の物品を中国市場から締め出すと言い出した。懸念したドイツ経済界はリトアニア政府に中国との妥協を促した。
このため、リトアニアのナウセーダ大統領は「台湾代表処」の名称を認めたのは誤りで、自分は決定に関与しなかったと表明した。一方、ランズベルギス外相は「すべて大統領とともに決めた」と反論した。そのうえで「リトアニアは悪いことはしていない」と述べ、設置は問題ないとの立場を改めて示した。
EUは世界貿易機関(WTO)への中国提訴を検討している。中国はEUまで巻き込んだリトアニアへのいじめをやめるべきだ。
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2022年1月10日付産経新聞【主張】を転載しています